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イクメンへの道 by 弁理士GolferPA

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H18 再現答案(特実)

■特許・実用新案法(6.7ページ)     評価:A

 ※このブログだと項目番号で「○数字」が表示できないので、
   数字のみにしてあります。

1.設問(1)(イ)について
 (1) 出願審査の請求(48条の3第4項)
   1 出願審査は出願審査の請求を待って行われるからである
    (48条の2)。
   2 また、原則、出願日から3年以内に出願審査の請求をしなければ、
    特許出願は取下擬制されるからである(48条の3第4項、第1項)。
   3 所定の請求書の提出が必要である(48条の4)。
     意思表示の明確化のためである。
 (2) 優先審査に関する事情説明書の提出(48条の6、特施規31条の3)
   1 特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲に基づいて定められる
    (70条)。
     乙は、「駆動機構Aを備える玩具」の製造・販売をしている
    ことから、甲の特許出願に係る発明の実施をしている(2条3項)。
    この場合、甲は、優先審査に関する事情説明書を提出すれば
    (48条の6、特施規31条の3)、認められれば、早期に権利を
    発生させることができる。
   2 所定の事項を記載した事情説明書を提出する(特施規31条の3)。
 (3) 出願公開の請求(64条の2第1項)
   1 特許出願は、原則、出願日より1年6月経過後、出願公開される
    (64条の2第1項)。乙の製造販売開始は甲の出願から6月経過前に
    開始されていることから、未だ、甲の出願日より1年6月経過して
    いない可能性が高い。この場合、甲は、出願公開の請求をすべき
    である(64条の2第1項)。早期に補償金請求権(65条1項)を発生
    させることができるからである。
   2 所定の事項を記載した請求書を提出する(64条の3)。
 (4) 拒絶理由(49条)を回避するための措置
   1 拒絶理由(49条)を有する場合には、それを回避するための措置
    をすることが必要である。具体的には、所定期間内の意見書提出
    (50条)、補正手続(17条の2)を行う。
   2 特に、明細書等の記載要件(36条4項1号、36条6項)には留意
    する。これらは拒絶理由(49条4号)だからである。
     甲は、明細書等に、駆動機構Aを備える玩具について当業者がその
    実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しており、
    また、課題解決事項を記載しているので、実施可能要件、委任省令
    要件(36条4項1号)は満たしていると考えられる。
2.設問(1)(ロ)について
 (1) 総説
    甲は、乙に対する金銭の支払の請求として、補償金請求
   (65条1項)、損害賠償請求(民法709条)をすることができる。
   その際、以下の事項に留意すべきである。
 (2) 補償金請求(65条1項)
   1 出願公開後であることが必要である点に留意する(65条1項)。
     甲は、前述のように、出願公開請求すべきである
    (64条の2第1項)。
   2 特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告を行う
    ことが必要である点に留意する(65条1項)。
     乙にとって不意打ちにならないようにするためである。
   3 乙が警告後特許権設定登録前に業として甲の発明を実施している
    ことが必要である点に留意する(65条1項)。
     前述のように、乙は、甲の特許出願に係る発明の実施をしている
    (2条3項)。
   4 補償金請求権は、特許権設定登録後でしか権利行使できない点に
    留意する(65条2項)。
     拒絶査定となった場合の権利処理関連の複雑化を回避するため
    である。
   5 補償金請求権行使とは、別途、特許権行使が可能である点に留意
    する(65条3項)。
     権利行使対象時期が異なるからである。
 (3) 損害賠償請求(民法709条)
   1 損害賠償請求とは、故意又は過失により特許権の侵害をした
    場合に、その侵害により生じた損害の賠償を請求することをいう
    (民法709条)。
     侵害とは、権原又は正当理由なき第三者が業として特許発明の
    実施、又は一定の予備的行為をすることをいう(68条、2条3項、
    101条)。
   2 前述のように、乙は、業として甲の特許出願に係る発明の実施を
    している(68条、2条3項)。また、正当権原も有していない。
    更に、甲は、過失推定規定(103条)を利用できる。
     以上より、甲は、乙に対して、損害賠償請求をすることができる
    (民法709条)。
3.設問(2)について
 (1) 差止請求とは、特許権の侵害、又は侵害のおそれがある場合に、
   その侵害の停止又は予防を請求することをいう(100条1項)。
    侵害とは、権原又は正当理由なき第三者が業として特許発明の
   実施、又は一定の予備的行為をすることをいう(68条、2条3項、
   101条)。
 (2) 甲による行為について
   1 侵害成否
     特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲に基づいて定められる
    (70条)。
     丁の専用実施権に係る特許発明は「駆動機構Aを備える玩具」
    であるのに対し、甲の製造販売しているものは「駆動機構A」
    であるので、直接侵害は構成しない(68条、77条1項、2項)。
    また、均等も考えられない。
     ところが、「駆動機構A」が「駆動機構Aを備える玩具」の製造
    において専用品である場合は、間接侵害となる(101条1号)。
     また、「駆動機構A」が専用品でなくても、発明課題解決に不可欠
    なものであり、汎用品でなく、甲に悪意があれば、間接侵害となる
    (101条2号)。
     課題である「新規な動作」を「駆動機構A」により解決している
    ことから、「駆動機構A」は発明課題解決に不可欠なものといえる。
    また、甲は特許権者であるから悪意を認定することができる。
     なお、甲の「駆動機構A」の製造・販売は業としての実施である
    (2条3項)。
   2 請求人適格
     専用実施権は登録が効力発生要件である(98条1項2号)。
     丁は特許権者である甲との間で、その特許権について範囲を全部
    とする専用実施権の設定契約を結んでいるが、登録されているかは
    不明である。
     よって、未登録の場合は、丁の実施権は、独占的通常実施権と
    考えられる。差止請求権は物権的権利を有する者に認められる
    ところ(100条1項)、独占的通常実施権はあくまでも債権的権利
    であって、特許法上では独占性は登録できないので、差止請求は
    できないと解される。
   3 実施権原
     甲は特許権者であるから、この特許権が実施権原となるかが問題
    となる。
     甲は、丁に対して、その特許権について範囲を全部とする専用
    実施権の設定をしており(77条1項)、よって、丁が専有し
    (77条2項)、特許権者である甲は実施できない
    (68条ただし書き)。
     よって、甲に実施権原はないため、この場合は、丁の差止請求が
    認められる(100条1項)。
 (3) 丙の行為について
   1 侵害成否
     丙は、「駆動機構Aを備える玩具」を製造・販売しており、
    業として丁の専用実施権に係る特許発明の実施をしている(68条、
    77条1項、2項、2条3項)。
     よって、丙の当該実施行為は、丙に権原等なければ、形式的
    には、丁の専用実施権の侵害を構成する(68条、77条1項、2項)。
   2 請求人適格
     前述のように、丁が独占的通常実施権者と考えられる場合は、
    丁は差止請求できない。
   3 実施権原
     通常実施権の登録は、対抗要件である(99条1項)。
     丙は、甲から、その特許権について範囲を全部とする通常実施権
    の許諾を受けている(78条1項)。
     よって、丁の専用実施権設定登録の前に、丙の通常実施権の登録
    がされている場合には、丙の通常実施権は実施権原となり、丁の
    差止請求は認められない。
     一方、丁の専用実施権設定登録の前に、丙の通常実施権の登録が
    されていない場合は、丙の通常実施権は実施権原とならず、丁の
    差止請求は認められる。
                                以上


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